塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。

【夏のレビュー企画】『平安王朝絵巻ぬりえbook』

 こんばんは♪

 このところの気温低下でうっかり風邪を引いてしまった風雅です。皆さまはお元気にお過ごしでしょうか?

 さて、すっかり季節外れとなった"夏の"レビュー企画、最終回は『平安王朝絵巻ぬりえbook』を取り上げます。 

 

■基本的なこと

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著者:鈴木 淳子

発行元:ディスカヴァー・トゥエンティワン

発行日:2016年4月15日

 

◇特色◇

・両面印刷

・装束・塗り方ガイドあり ※10ページ分

・インデックスなし

・付録なし

・巻末解説あり ※3ページ分

・作品数:65点 ※解釈により変動

・ジャンル:童話系、風俗画系、服飾系

※『童話系=童話・神話伝承・古典等、特定の物語を主題にしたもの』と定義しています。

 

 『源氏物語』などを題材にした塗り絵本は風雅が知る限りでも何冊か出ているのですが、この本はなぜか都心の大型書店でしか見かけたことがありません💦

  

■出会いと付き合い

 昨年末に新宿の老舗書店で知り、今年の5月初め頃に別の大型書店で買いました。

 手始めに端午の節句のページをゴールデンウィーク後半をほぼ費やして塗りました(その時の記録は、本ブログで既にまとめたことがあります)。

 以後は、あまり進んでいません(^^;

 線画を眺めてはどうやって塗ろうかと構想…というか、妄想し続けている状態なので、関心は変わらず高いのですが。もう少し慣れて、自分の中に"平安スイッチ"が出来るまでは、本書の進行はカタツムリモードになりそうな予感💦💦

 ただ、素敵な本なので、妥協せずじっくりと塗り進めるつもりです(*^^*)

 

■ズバリ、どんな塗り絵か

 本書には、『源氏物語』『伊勢物語』など王朝文学の場面や平安時代の習俗・装束などが描かれています。

 本の形が極端に横長という特徴がありますが、これはタイトルにもある通り、絵巻物ふうの画面構成を意識した為と思われます。

 中身を少し見てみますと………

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上のように、斜め上から室内を描いた、絵巻に倣った構図が散見されます。

 また、空間を分ける際に扇面を用いたり、端に様式化された雲を描いたりと、和の絵画伝統を活かした工夫もなされています。

 一方で、絵柄は少女漫画風。

 人物の多くは、細面ですっきりしたシルエットで描かれています。

 どういう訳か鼻筋しか描かれていない女性も少なくないのですが、美女っぽい雰囲気が出ているだけにこれは個人的に少々残念(^^; (美女の顔をじっくり塗り込むのも、大人の塗り絵の楽しみだと思うのですよー…)

 王朝文学にもとづく線画は、『源氏物語』が最多数を占めます。まぁ、質量ともに平安時代を代表する文学作品ですからね……。『伊勢物語』『竹取物語』『枕草子』『和泉式部日記』などは数点ずつでした。

 他に、節句などの季節行事を描いた線画、装束や文様を描いた線画があります。

 一言で総括すれば『平安時代と王朝文学のきらきらしいところが詰め込まれた塗り絵本』となるでしょうか。

 

 なお、本書のセールスポイントは、有職故実の専門家による監修のもとに、平安時代の風物を『忠実に再現』した点のようです(←表紙に誇らしげに書いてある(笑))。

 といっても、実状が分かっていない事が多々あると当の監修者が述べている以上、『忠実に再現=現段階で可能な考証と通説に反しない』程度で理解しておくのが妥当かもしれません。

 装束については、巻頭で十二単の着方が載っていて、塗る時に非常に参考になります。ただ、本書で装束が1つのポイントになってもいる点を考慮すると、もう少し細部や素材についての解説が充実してもいいのではないかと感じました。

 「男子の装束で、太刀はどのように提げているのか?」とか、「冬物の着物に裏地は付いていたのか?」とか、塗り始めると気になることが次々と出てくるのです……(^o^;)

 巻末の解説のほうは、作品や背景事情の簡単な説明となっていました。

 この部分が、どういう訳か曲水の宴のページまでしか解説がなく、後ろのほうに出ている線画については一言もありません💦別の本屋で中身を見ても同じページで終わっていたので、落丁ではなさそうですが、編集方針に謎が残ります(^^;

 ともあれ、本書を眺めていると、平安時代の風俗は、現代とはかけ離れた感覚・生活習慣・人生観によって構築されている事がよく分かります。

 現状、気軽に塗れる気は全くしません(笑)

特に初めのうちは、色々調べたり確認したりしながら塗らざるを得ず、まとまった時間と気合が要りそう。

 その一方で、文学作品を踏まえた線画などは、読んだイメージを投影して塗れるので、取っつきやすく感じます。

 

 塗り絵本としての機能面は、線画自体がよく出来ている一方で、本の形状から来る物足りなさも感じられます。

 描線は黒。輪郭線がもっとも太く、陰影や模様の線はより細くなる傾向があります。

 いずれも丁寧な線で描かれ、細部まで概ね明瞭で、塗り絵用の線画として塗りやすく感じられます。

 その半面、ノドの部分を水平に開ききれないのは非常に残念です。線画が絵巻物っぽいテイストを加味しているだけに、見開きページなどが水平に開けると、絵巻物感が増すのに…と(^o^;)

 紙は、多少凹凸のある白い紙で、油性色鉛筆で塗る分にはストレスを感じません。

 しかし、和風の線画ですから水彩や顔彩、墨なども使いたくなってくると思うのですが、意外と薄くて、その種の画材を選ぶには心許なく感じるかもしれません。

 風雅自身は、

「この本で裏抜けしたら泣くわー」

と思い、水彩色鉛筆で塗るのを諦めました(泣) こういう絵柄は片面印刷で仕立てて欲しい、と切実に感じます💦💦

 

 こうしてまとめると、この本は企画と出来上がりが噛み合っておらず、ちぐはぐな一面があるようですね(^^;

 平安王朝文化を題材にするとか、絵巻物のテイストを加えるとか、専門家に監修を依頼している点は意欲的で、線画の出来も上々。

 その一方で、解説が一部だけ省かれていたり、本の形状が塗りにくさを感じさせたりと、企画を満たさないどころか阻害しているのは、遺憾としか言えません💦

 文句を言っても紙が厚くなる訳ではないので、読者のほうが工夫するか折り合うしかないと分かってはいますが……今回はレビューなので、使い勝手に不足がある点も指摘しておきたいと思います(^o^;)

 

■着色例

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画材:油性色鉛筆。

※以前に制作の記録を書いた作品です。

 

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画材:油性色鉛筆。

※まだ未完成ですが、男性の装束の下塗りに茶色のミックス色鉛筆を使ってみたので、参考になればと思い、載せました。

 

■終わりに

 恒例の感想コーナーです。

・好きか ★★★★★★★★★★

・良いか ★★★★★★★★★☆

・使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆

・達成感 ★★★★★★★★★☆

・オススメ度 ★★★★★★★★★☆

 この感想、フランクな言葉で表すと、

「内容は抜群に素敵だし、達成感もあるから、塗ってみて!私も大好きなの!」

となります。

 高評価の理由は、企画に独創性があり、画面に情熱が感じられる為です。端的に、著者が「平安王朝文化、だーい好き❤」なのでしょう。「平安王朝文化の美しさを塗って楽しんで欲しい!」と思っているのが、線画を眺めているだけでも伝わってきます。

 人間、好きな物の魅力を誰かに語ろうと思った時は、説明を分かりやすくしたり、美味しいお茶菓子を用意したりと、もてなしを工夫するもの。本書も1点1点が丁寧で明瞭に描かれているのは、平安王朝文化への愛情からくる、おもてなし精神の顕れではないかと感じました(*^^*)

 

■夏のレビュー企画の終わりに

 本記事で、夏のレビュー企画シリーズは終わりとなります。

 本シリーズを書くまで気が付かなかったのですが、どうやら風雅は"本"と名のつくものに妥協が出来ない人間だったようです。毎度変なスイッチが入り、暴走気味のレビュー企画でしたが、1行でも読者様の参考になっていれば嬉しく思います(*^^*)

 次回のテーマは未定ですが、よかったらまたお付き合いください。

 それでは、今回はこの辺りで(^o^)/"