塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。まったり気ままな塗り絵ブログ。

【夏のレビュー企画2019】『超色鉛筆画レッスン』【技法書】

 こんばんは(^o^)

 8月葉月の一日ですね。遂に(?)レビュー企画の季節がやってきました。

 今年は技法書と配色本合わせて5冊のレビュー執筆を予定しています。

 

 実は、自分に実用書のレビューを書く資格があるのか、少し迷いました。

 ご存じのように手探りの素人である為、(料理習いたての子どもに包丁各種の良し悪しや適性が理解しにくいように)本の真価を汲み取りきれない怖れは今も感じています。

 という訳で予めお断りしておきますが、本ブログのレビューは風雅個人の理解力(読解力や観察力やお絵描き経験)の及ぶ範囲で書かれております。

 また、塗り絵のクオリティの向上に役立つかという観点を中心に執筆しています。

 どうぞその2点を踏まえてお読み下さい。

 

 ーーと逃げ口上をうって少し気楽になったところで、早速第一弾に参りましょう♪

 今回は、油性色鉛筆を使った色鉛筆画の技法書を取り上げます。

 

■基本的なこと

・題名:『この1冊で苦手を克服 超色鉛筆画レッスン:絵画技法の基本と応用』

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・著者:弥永 和千(やえ かずゆき)

・出版社:メイツ出版株式会社

・発行日:2017年7月5日

・構成:緒言→本論→後書き。

 本論は6章立て。

その内実は53点のポイント&13本のコラム。

・付録:無し。

・その他特徴:オールカラー。

 

 著者は色鉛筆画家とのこと。寡聞にして風雅は本書を手に取るまで知りませんでした。

 

■ズバリ、どんな本か

 本書の本質は、著者自身が2-3ページの緒言の最後で「色鉛筆画をより深く楽しむためのヒント集」とズバリ述べています。

 執筆の主旨についても、下のように明言しています☟:

「本書では手順として「こうしたらできる」といった最後の一手をお伝えするのではなく、「こう考えたらできる」答えの見つけ方を集めてみました。」(3ページ)

 

 つまり、残念ながら『動物を可愛く描く方法』や『水面を塗る手順』が逐一紹介されている本ではないということ。

 その代わり、どういう観察の仕方をしてみるとか、どういう考え方で取り組むとか、いわば助言を数多く盛り込んでいます。

 中高生の頃、放任主義ながら時々的確なアドバイスをくれて生徒から一目置かれている"賢者"キャラの先生が学校に一人二人いなかったでしょうか?

 そうした"賢者"系美術教師の著作だというイメージを風雅は抱きました(※個人の感想です)。

 人が賢者を必要とするのは壁に行き当たった時と相場が決まっているように、本書も"壁"に行き当たった時に読む為の本だと思います。

 トピックは色鉛筆画を始める段階から段々と細かく技術を要する段階に進むよう構成されていますが、これは不特定多数の読者がどこでつまずくか分からないから初期の段階からステップを並べているのかもしれません。

 

 総括すると、手順を習いたい方から見るとほぼ無用、助言や別の視点が欲しい方には有用な本だと言えます。

 

■個人的な観点から見て

 風雅がこの本を買った背景には、河合ひとみ『描き込み式色鉛筆ワークブック』(2017年、誠文堂新光社)という別の技法書の存在があります。

 色鉛筆の技法を習得できるよう構成された解説付きのワークブックで、熱意の感じられる本。客観的に見てまずまずいい技法書だと感じる一方で、ワークそのものには息苦しさを否めませんでした。

 というのも、色鉛筆の技法一般ではなく、河合ひとみ流色鉛筆画の描き方をなぞっている気がしてくるのです。

「河合流を極めていって本当に自分の描きたい色鉛筆画が描けるのか?」

と自問するようになりました。

 河合氏の作品は色鉛筆自体の質感がとても美しく出ていて、塗り絵に応用すると美しい画面になりそうな期待感を抱かせます。他方で、絵画ファンとしての目線で見ると、小さく綺麗に仕上がったミクロ志向の作品は

「よく描けてて上手だね。それで?」

という、関心外の作品でもありました(描けもしないのに偉そうに評していますが、好みと価値観による主観の世界ということでご容赦下さい)。

 

 風雅自身は、背景まで描き込まれた、構図と配色に緊張感のある写実画が好きです。塗り絵でもメリハリのある作品を好みます。

 河合流のワークは緩いペースで続けるとしても、メリハリ写実系の画風の人が描いた色鉛筆の技法書も参考にしてみたくなり、数冊見比べて本書を選びました。

 選択の決め手は、多くの事柄について理由がきちんと説明されていることと、「好きな物を・好きな色鉛筆で」描こうというスタンスにありました。

 著者は『絵の描き方は教えられないもの』という考え方に近く、描き手自身が納得のいく描き方を見つけるられるよう、考え方のポイントを伝授することは可能だという見解のようです。

 そして、何かと緩くもあります(笑)。

 例えば、lesson10には「①あるだけで心が躍る道具を揃えよう ②道具を使う楽しみも絵を描く楽しみのひとつ」(26ページ)と書いてあります。

「これってわざわざ書くこと?」

「まさかのトキメキ重視?!」

と笑ってしまいましたが、プロが言うからにはきっとトキメキが大事なのでしょう…。

 

 本書で私が一番好きな"賢者の助言"は「うまくいかない時は「未だ途中だから」と思おう」(p.81)というアドバイスです。失敗作でも次の制作時の糧になるから、ということのようです。少し長いスパンで見直してみた、前向きな考え方ですよね〜。

 ワタクシは不肖の生徒なので逆らって放棄することもなくはありませんが、こうした前向きな見方をするよう心がけてはいます(笑)。

 

 ともあれ、こういうカラーが今の風雅には合うようで、本書を読んでから従来よりのびのびとお絵描きや塗り絵ができるようになった気がします。

 そういう意味で、個人的には幸せな本との出会いとなりました。

 

■終わりに

 以上、今もっとも馴染みがある油性色鉛筆の技法書を紹介してみました。

 

 実用書のレビューなので

「ズバリ、買いですか?」

と訊きたい方もいらっしゃるかと思うのですが…正直、答えにくい質問です。

 というのも、合う人と合わない人がいる本だと感じるからです。

 塗り絵師の方にとっては手順中心でない分、即効性は低いかもしれません。ただ、読んでマイナスになることはない本かとも思います。

 いずれにせよ、本レビューが読者様の参考になれば幸いです。

 今夜はお付き合い頂き、ありがとうございました。

それでは、また〜(^^)/