塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。まったり気ままな塗り絵ブログ。

【雑談】上野でゴッホ展。

 おはようございます。

 今回は観るほうの美術の話題です。

 

 12/30(月)、東京・上野にある上野の森美術館ゴッホ展を観てきました!


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 美術にさほど関心のない人でもまず知らない人のない、鮮烈な画家の企画展なので、既に観に行った方も多いかと思います。

 結論から言うと、大当たりでした。

 

 そもそもゴッホという画家が、佳作を並べれば大抵の見学者がいいものを観た気になれるという"観客ウケの良い"画家ではあるのですが、王道を行く丁寧なアプローチで企画展としてのまとまりがあったと感じます。

 本展のテーマは、『27歳にして画家になろうと決意した無名の人間が、どういった刺激を受け続けて"画家ゴッホ"になりおおせたのか』という点にあリました。

 そして直接的な刺激を与えた存在として、オランダのハーグ派と呼ばれる画家たち、フランスの印象派周辺の画家たちの作品を交えながら、ほぼ時系列でゴッホの作品を展示しています。

 

 ハーグ派とはどんな絵を描くのか。

 今回まとまった点数を観たことで認識したのは、茶褐色や灰色を多用する写実的な画風の一派ということでした。この一派の印象を1色で表すならば、ウォームグレイでしょう(笑)。

 古いセピアの写真にところどころ着色したような画面を思い浮かべて頂ければ、何となくイメージがつかめるかと思います。

 この時期のゴッホの作品は、晩年の傑作とは対照的に、暗くて地味な色調を帯びています。

「周りに地味色の絵ばかりあったのだから、当然そうなった訳か」

と腑に落ちました。

 画力自体もまだ発展途上で、チラリと光るものはあるものの、ぎこちなさのほうが目に付き、あまり見栄えのしないものでした。

 ただ、オランダ時代のゴッホは、師マウフェの助言に従って、モチーフを見て描くことに真摯に取り組んだようです。次第に描き慣れてきたことは、順路を進むうちに素人目にも明らかでした。

 特に『秋の夕暮れ』という作品は、夕焼けの色合いに後年の"大化け"の萌芽が感じられるいい作品だったと思います。

 

 続く展示室から、室内は急に明るくなります。

 というのは、印象派やその周辺にいた同時代の俊英の作品が飾られている為です。

 ゴッホがパリに行き、刺激を受けた存在として、ルノワール、モネ、シニャックシスレー、モンティセリ等の作品が並んでいました。

 モネやセザンヌルノワールといった巨匠の作品は、正直に言って彼らの作品の中では二級品かなぁと思いましたが…ゴッホ展なので目を瞑りましょう(^o^;。

 肝要なのは、オランダから出てきたゴッホの眼に、印象派周辺の作品群がどれ程鮮やかに映ったかということです。

 オランダ時代の展示室と雰囲気がガラリと変わるので、見学者も一種の追体験が出来るかもしれません。

 ゴッホはフランスで色彩と表現に対する関心を深めていきました。

 今日ゴッホの特徴として知られる厚塗りも、出発点はモンティセリという画家の影響にあったようです。このモンティセリは3点ほど展示されていましたが、厚塗りならではの良さが出ていたのは1点のみでした。それだけ、油彩の厚塗りはスマートに見せることが難しいのだと思います。

 もっとも、ゴッホはあらゆる意味で洗練とは程遠い人物でした。

 印象派ふうの作品を描いてもどこか野暮ったく、アクが残ります。

「お洒落なランチのつもりでシーザーサラダを注文したら、ベーコンも野菜もパンチがあって予想外に満腹になった…💦」

ーーゴッホ印象派を模した作品は、そんな印象です(笑)。しかし無心で食べるとこのサラダは絶品で、独特の味わいがあるのも事実です。

 『タンギー爺さんの肖像』。

 『サント=マリー=ド=ラ=メールの風景』。

 いずれも端正とは言えませんが、明るく鮮やかな色調に目を奪われました。

 

 やがて最後の展示室に進むと、晩年の傑作が見学者を待ち受けていました。

 展覧会のポスターにも採用されている『糸杉』、『薔薇』、そして夕焼け空と人物を描いた『夕暮れの松の木』……。

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 オランダ時代からの変化を知りたいのであれば、先にふれた『秋の夕暮れ』と『夕暮れの松の木』を比較してみてください。後者は風景画とは思えないほどの躍動感があります。

 『糸杉』と『薔薇』は、あまりの生命感と鮮やかさに涙が出てきました。

 風雅は絵を観ると2秒後には筆致やら構図やら色づかいやらを目まぐるしく確認し始める頭でっかちな見学者なので、『糸杉』も『薔薇』も理屈にもとづく感興と直観から来る感動とでクラクラしてきました。

 

 こうして心地よい疲労感に見舞われながら、見学室を出る羽目になりました(^o^;。シリアスな映画を1本観たような充実感です。

 

 なお、会期末まであと半月ということもあり、会場はそれなりに混雑していました。そこで1つ驚いたのが、思った以上に若年層の見学者が多かったことです。

 風雅が過去に観た回顧展では、伊藤若冲展と岡本太郎展には若者の姿が目立ったのですが、ゴッホ展も負けず劣らずといった様子でした。普段高齢者の多い企画展ばかり観ている身には新鮮な眺めでした(^^)。

 また、物販コーナーに『大人の塗り絵 ゴッホ編』を見かけました。塗り絵ブーム沈静化以降、企画展で塗り絵本が並んでいる所を久々に目撃しました(笑)。

 『糸杉』の額絵を買ってきて、帰宅後部屋に飾りました☟。
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 長々と書いてしまいました。

 珍しく自信をもって老若男女にオススメ出来る展覧会を観られた為と、ご容赦ください。

 ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。 

 一応これでも塗り絵ブログなので、最後に1点近作をご覧に入れて結びたいと思います。

 ブルガリアの民族衣装の塗り絵が無事終われば、今夜もう一本記事をお届けします。

 それでは、また〜(^^)/

 

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出典:『和の花暦と花もよう ぬり絵ブック』。

画材:油性色鉛筆、ボールペン。