こんにちは♪
今回も夏のレビュー企画の続きです。
『世界の美しい文様ぬり絵 アラベスク文様』(パイインターナショナル)を取り上げたいと思います(*^^*)
■基本的なこと
発行日:2016年8月19日
※著者名記載なし
◇特色◇
・両面印刷
・塗り方ガイドなし
・付録なし
・インデックスなし
・作品数:80点
・ジャンル:模様系
■出会いと付き合い
昨年の初冬、行きつけの書店で一目惚れして買いました。ちょうど塗り絵ブームが下火になって、売場が縮小され始めた頃のことです。初心者には細かすぎる、と自覚しつつも、「欲しくなった時には手に入らなくなっていそう」と思って決めました。
線画の優美さに惹かれての購入だった為、時々取り出しては、塗りかけを進めたり、パラパラと未着手のページを眺めてうっとりしたりしています。
同時進行で2~3ページ抱えているのですが、あまりに細かい為、一度に何時間も塗っていられません。集中し始める前に疲れて中断…という日がほとんど。
なお、本書を開いている時は、アラベスク文様が描かれた寺院や宮殿を妄想していることが多いと、最近自覚しました(笑)
西洋史と建築と美術が大好きなので、アラベスク文様塗り絵は妄想の世界に入り込む鍵みたいなものかもしれません。
……言葉にすると軽く変態めいていますね。こんな楽しみ方をしている人間もいるということで、生温かく見守って頂ければ幸いです(^^;
■ズバリ、どんな塗り絵か
さて、肝心の中身について、まずは塗りかけページの画像をどうぞ↓
題名の通り、アラベスク文様が様々に描かれています。
ちなみに、アラベスク文様とは、ざっくり言うと、唐草文です。狭い意味では、イスラム文化の影響を受けて16~17世紀にヨーロッパで隆盛した、つる草または曲線の文様を指します(参考画像↓)。
建築や装飾写本、工芸品などに幅広く見られる為、多くの人は「見れば分かる」程度に知っているはず。しかし、「描いてみて!」と言われると、戸惑うのではないでしょうか?
少なくとも風雅にとっては、アラベスク文様は「識別できるけれど再現できない」状態でした。「薔薇」「鬱」といった、読めるのに書けない漢字のようですね。
これは、文様の構成要素が何となくイメージできる一方で、構造がよく分かっていない為でした。アラベスク文様を微細に観察し、それを帰納する経験が不足していたのです。
本書は、まさにその経験を得られる場となりました。
実際、配色の為に線画の構成に目を向けることになりますし、塗りながら、模様がどうなっているのか、なぞって理解できる一面もあります。
線画の中のつる草をたどっていくと、2つに分かれたり、花のモチーフに連結したり、と様々に変化しつつ続いていくのが見て取れます。改めて、アラベスク文様のキモがつる草(もしくはつる草状の曲線)であることが実感できました。
文様好きには堪らないひと時が過ごせる塗り絵本だと思います。
…と、"アラベスク天国"な本書ですが、大きな注意点があります。
細かいのです。時には、尋常でなく。
0.38のボールペンでもはみ出すパーツとか、「印刷の超絶技巧を見せつけたくて作ったの?」と訊きたくなりました(^^;
本書の序文に「作品を完成させることで、(中略)前向きでリラックスした気分になれたりするでしょう」と誇らしげに書いてありますが、制作中は逆に気の抜けない局面ばかりのような気が……💦💦
さらに、もう1点。
本書の作品同士が相互に似ています。
その理由として、
①モチーフの配置パターンが類似
②一部のモチーフが複数のページで重複
という2点が目につきます。
もう少し線画の多様性を増すとか、収録作品数を抑える代わりに紙質を上げるとか、付録を付けるとか、1冊を通して楽しませる工夫はなかったのかな、と感じました。
なお、線画における線は、黒。概ね均一で、かなり細い線となっています。
私見では、アラベスクのような文様は、1本の線の上でも太さが変わるほうが美しく見えると思うのですが、ぬり絵としては太さ均一でもいいのかもしれません。
紙は少し硬めな印象を受けました。
また、ノドの部分ギリギリまで図案が広がっているページもある割に、開きにくいという難点がありました。
本書は、線画(の細かさ)によって合う画材が異なってくると思います。
一部の線画の非常に細かい部分では、色鉛筆どころか、極細のサインペンやボールペンでも無理では、と感じました。
「縫い針の先にインクを浸ければ塗れるかな」と思い立ったものの、実行する気になれず。悩ましいところです。
なお、コアな体験談ですが、手持ちの硬~い水彩色鉛筆(カランダッシュのプリズマロ)では、乾いた状態で塗っている時に「塗りにくい」と感じました。紙に画材が馴染まず、拒まれるような感覚です。
もしかするとやや気難しい紙質で、色鉛筆などは相性の良し悪しがあるのかもしれないと思いました。
サインペンは、風雅が使ってみた限りでは、裏に滲まず、綺麗に発色しました。
■作品例
風雅は、さほど細かくないページから塗っています。その為、ここに挙げた作品例は、本書の中では細かくない部類の作品ばかりです(^o^;)
本書で恐らく最も柄が大きい線画。
葉っぱの中の色が濃い部分だけ乾いた水彩色鉛筆で塗り、他は油性色鉛筆で塗りました。
本書で最初に塗った線画です。
画材は油性色鉛筆。
画材は、水彩色鉛筆。
奥付ページのワンポイント塗り絵です。
細い線だけサインペンを使い、他の部分は油性色鉛筆で着色しました。
■終わりに
最後は、恒例の感想コーナーで締めくくりたいと思います(*^^*)
好きか★★★★★★★★★☆
良いか★★★★☆☆☆☆☆☆
使い勝手★★★☆☆☆☆☆☆☆
達成感★★★★★★★★☆☆
推奨度★★★☆☆☆☆☆☆☆
これは、「塗り絵本として使い心地に思うところは色々あるけれど、とにかく好き❤」という意味になります。
「オススメ?」と訊かれた場合、余程の文様マニア以外の方は、書店で現物を見てみることをお勧めします(およそ万人受けはしない本かと思うので💦💦)。
今回は、けっこう長くなってしまいましたね。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
【参考文献】
海野弘『ヨーロッパの装飾と文様』2013年、パイインターナショナル