塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。

【夏のレビュー企画】『幸せのメヌエット』後編

 こんばんは~。
 暫く間が空いてしまってすみません💦

 実は、前回記事を投稿した翌日から、奈良県に旅行に行っていました。
 東大寺大仏の前での野外歌舞伎、法隆寺五重塔興福寺の阿修羅像等々、濃密な数日間でした…が。
 帰宅後、燃え尽き症候群がひどく、1週間近くぼーっとしていました(^^;
 昨日、ようやく塗り絵を再開。
 ブログも、相変わらずマイペースですが、続けていきたいと思います(*^^*)
 
 今回の記事は、前回の続き。
『幸せのメヌエット』のレビュー後編となります。
 
■ズバリ、どんな塗り絵か

 本書は、動物たちを主体とする風俗画ふうのイラストを中心に構成されています。
 同じ著者の『森が奏でるラプソディー』の続編と位置づけられるようですが、明確な筋立てはなく、動物たちの誕生・成長・青春がスナップショットのように連ねられています。
 描線の色は、黒。
 線がよれたり、途中で太さが変わったり、一部なぞり直した気配があったりと、やや滑らかさに欠ける傾向がありますが、そうした特徴で塗りにくくなっているとは感じられません。
 むしろ、手描きのような味わいがあり、いい意味での個性が出ています。
 収載の線画は、概ね3つのタイプに分類できます:
①着衣の動物
②着衣なしの動物
③前後する線画の主題に関わる静物

 全体にデフォルメが少なく、①②とも動物の描き方にはあまり差異はありません。混在する場合もあります。
 但し、①のほうが、構図的に人間臭さが強く出る傾向が感じられます。
 敢えてレッテルを貼れば、①は『とてもファンシーな鳥獣戯画❤』となるでしょうか。
 ②は、木や草花を背景にしている作品が大半を占めています(風雅は、このタイプが一番好きです)。
 ③は動物ではなく「モノ」が主題です。

 例として未完成のページを①~③の順に挙げてみます↓

・①の例
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・②の例

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・③の例
 ※隣のページが上掲の①の例.

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 一見するだけで、圧倒的なデッサン力が見て取れますね。加えて、動物には表情があり、静物にも趣が感じられます。
 本書全体の雰囲気として、押しつけがましくない可愛さがあると思います。
 線画に写実性があり、モチーフも折り重なっている為、塗る時には立体感や質感を出す必要がありそう。
 そこそこ難易度はありですが、
「フルカラーだったら、もっと可愛くなるだろうなぁ……( 〃▽〃)」
と思うと、塗る意欲が湧くのも事実。
 これが塗り絵本として好評を博す理由かな、と頷けました。
 惜しむらくは、動物や小物に比べ、建物や馬車などの出来が一段落ちる点でしょうか。恐らく、大きくて複雑な構造物を描くのが苦手なのだと思われます。

 ちなみに、風雅が本書で一番難しく感じたのは、動物の顔でした。
 動物を塗る時の基本として、
「毛並みを描き込むように塗ろう」
と言われますが、実際のところ、毛並みだけ意識しても塗れません(^^;
 扁平ではなく立体的な存在の為、毛流れを描きつつ、光が当たる部分と暗くなる部分を塗り分ける必要が出てきます。
 動物の顔は部分毎に毛の色が細かく分かれる上、凹凸がある為、画像を見つつでもややこしい……(^o^;)
 身近に動物がいないので、様々な角度からの画像を見比べつつ塗っています。

 そういう具合で本書を塗り進め、4つの作品を完成させた時点であれば、本章もこのまま終わっていたでしょう。
 その時まで、風雅は
「動物難しいよ~。試練のメヌエット~」
と喘ぎつつも、苦労に値する本を塗っていると充実感を感じていました。

 5つ目の作品は、
「本命の前に、モモンガも1度塗っておきたい」
と考え、本書で初の見開きページに挑戦することにしました。それが、森のオールスターのページ↓でした。

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 この見開きページは、
『森の中、画面右で、奥に家がある一本道を頭巾のウサギが歩いていく姿を、画面のそこかしこに散らばる動物たちが見つめている』
という風景画の構図になっています。
 ただ、手を着ける段階で
「どうにも、まとまりにくい線画だ…」
という印象がありました。
 また、天道虫や蝶が大きすぎるとか、一軒家の奥に位置する草の花茎が見えないとか、奇妙な点もありました。
 そのあたりは『メルヒェン』なる魔法の言葉で自分を宥めていたものの、ある時、拭えない違和感に手を止めました。

「あれ、このパーツさっきも塗った…」

 それは、画面右端の鹿の隣に植わる丸い葉っぱの群生でした↓。

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 よく見ると、左の画面にも同形かつ同寸法の群生が2つ見受けられました↓。


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 まさか、と思って画面全体を隈無く眺めわたすと、同様の例が5組見つかりました(うち1組は、左右反転)。
 対称形の図像ならともかく、風景画では同形かつ同寸法のパーツが存在するのは不自然と言わざるを得ません。
 特に、すぐ上に上げた2つの群生は、倒木を挟んでほぼ前後に位置する為、同じ大きさでは遠近感も狂います。
 そうまでしてパーツの使い回しをして、何がしたかったのか。

「手抜きか……Orz」

 それ以外に考えられず、手酷く裏切られた気持ちになりました(イラストレーターが自分の作品で手を抜くのは、ファンに対する最大の裏切りだろう、と思います)。
 それまで一途に尊敬していただけに、怒りと失望で言葉も出ません。
 このショックで、数日間はこのページを塗る気がしませんでした。

 「元々まとまらないと思っていたことだし、投げ出そうかな」と迷いましたが、この本には『モモンガのページを塗る』という至上命題が控えていました。
 このページを中止することで本書に悪いイメージだけを抱いたままではいけない、と思い直し、改めて本書を開いてみました。
 その結果、分かったこと:
・複数のパーツを個別に描き、その組合せで各ページの線画を構成している
・左右反転含め、対称形の画面以外での不自然なパーツ使い回しが見られる
・パーツ同士の組合せをした為に、本来見える位置にあるはずの輪郭線が消失している場合がある
・パーツ同士の組合せの結果、遠近感が狂う場合がある
 …以上を一言でまとめると、『本書はパーツ同士を組合せて線画を構成しているが、その結果生じる様々な矛盾を放置している』と言えます。
 私が引っかかりを覚えた「森のオールスターズ」は、恐らく、そうした特徴が顕著に出たページだったのでしょう。
 個人的には、パーツ同士を合成することで1枚の線画を完成させること自体は否定しません。よくある手法だと見ています。
 しかし、不自然なパーツの組合せ方で線画の出来を劣化させる怖れがある場合、最大限の努力をしてそれを防いで欲しいと期待してしまいます。
 まして、手抜き目的と思われかねないパーツの使い回しをするのは、塗り絵をする読者を軽く見ているというか、失礼であると思います。
 という訳で、本としての完成度も著者の人間性も残念な塗り絵本だと見なすに至った訳ですが、開けば以前と同じように「可愛い❤」と感じるのも事実。
 かくて本書を許容することも否定しきることも出来ず、複雑な心境です…💦
 ただ、人間同士でも時に『性根はダメだと軽蔑しているけれど、話していて面白い友人』ができるのですから、本書とも、この二律背反な感情を抱きつつ付き合っていくことが出来るのではないか、と最近は考えています。

 なお、本書の紙は、『海の楽園』などに比べると、だいぶ薄い気がします。ページを光に透かすと、裏面の描線がくっきり見える程度です。
 1度だけ水彩色鉛筆を使った時は、「水分を抑えないと…」と気疲れしました。
 以後はもっぱら油性の色鉛筆を使っています。油性色鉛筆で塗る限りでは、ツルツルし過ぎておらず、快適に塗れる印象です。

■終わりに

 いつもはこのコーナーで恒例の★評価をしていますが、現段階では冷静に判断できない為、差し控えます(楽しみにして下さっていたら、すみません)。
 ここまで長々とお読み頂き、本当にありがとうございました。
 気がつけば、もうすっかり秋ですね。
 季節外れも甚だしい"夏のレビュー企画"ですが、あと1冊分、頑張ります。
 また、通常の塗り絵体験談もお伝えしていければと思っているので、よかったらまた、お付き合いください。
 それでは、お休みなさい(*^▽^)/★*☆♪