こんばんは〜♪
昨日から『ぬりえ天平文様 かぎろい』所収「赤地花文錦」の制作話をお届けしています。
ちなみに、完成作品はこちらです☟:
それでは、後編に参りましょう(^^ゞ
■シルエット塗りの準備
シルエットの型は、ポーケ兄弟という19世紀の版画家が描いたファッション・プレートから取りました。
左側が「ショールをまとう貴婦人」、右側が「モハメド・イブラヒム(コルコンダ王の将軍)」で、それぞれ単独で描かれています。
どちらも著名人ではなく、ミロのヴィーナスやロダンの『考える人』のようにシルエットだけで誰もが対象を特定できる美術アイコンでもありません。
2つのシルエットで影絵芝居の一場面のようなものを作りたいと思い、人物の輪郭が優美な凹凸を伴う素材を選びました。
工程は至って単純でした。
トレーシングペーパーを使って型を取った後、線画に写しただけです☟。
その際シルエットの配置に拘りました。
①文様の全体像が綺麗に見える
②輪郭が文様の描線と同化しない
③輪郭が文様の描線と平行しない
④人物同士が交流しているように見える
ーー以上の条件を満たす位置に置くことで、シルエットと文様が相互に引き立て合えるのではないかと考えたのです。
このうち④については、2人が何をしているのか決定的に示せる要素がない為、見る方を困惑させるものになってしまったかもしれません💦
影絵に吹き出し💬を付ける気分で自由に想像してもらえたらいいな、と風雅本人は思っていたのですが。…見る方に楽しんで頂ける作品を作るのは難しいものですねぇ(^.^;
と、そんな反省会はあとにして。
ともかくもこれで塗る準備が整いました♪
■着色
参考までに、前編で作成したパレットを再掲します☟。
着色は内側を先に完成させてから、外側に向かって1色ずつ増やしていく流れを基本としました。
内側は青の濃淡を基調とし、そこに黄色を絡めていくイメージで進行。終わった直後は、下のような状態でした☟。
ここから外側に進出して間もなく、ヤマ場が訪れました。
上の画像でブルーグリーンで塗り進めている部分が、文字通り切れ目がなくつながっているのです。宝相華の花びら8枚の最大部分が巨大な1つのパーツという……💦
線が入り組んでいることもあり、
「終わりが見えない…(・・;)」
とげんなりしつつ、日を跨ぐと余計にキツくなるからと夜ふかしして塗り切りました。
ブルーグリーンの部分を塗り終えた時点で、概ね下の画像☟のような状態です:
ここまで出来ると全体像が想像しやすくなり、格段に楽になりました。
また、1つ前の画像と比べると、人物のシルエットも着々と黒く染まりつつあることに気付くと思います。
シルエットは、色鉛筆で手が疲れた時の骨休めとして、ぺんてる社のサインペンで塗り進めました。ただ、中の模様をまだ確認したい区域は後回しになります。
ブルーグリーンの次には、グリーン、イエロー、オーカーの各部分を塗りました。
オーカーはイエローの周囲に置くと、陰影を添えるようなはたらきをします(この効果は少し離れた所から見たほうが顕著に分かります)。
恐らく、このように同系統の近似色をベタ塗りで隣合わせに配置する彩色方法を極めていくと、かの有名な『繧繝彩色(うんげんさいしき。奈良の寺などで見られる古代のグラデーションの技法)』という技法になるのだと思います。
2色程度では『繧繝彩色』と呼ばないのかもしれませんが、天平文様的な彩色方法として本作品で多用しました☟。
前掲のパレット🎨も、実はそうした2色の陰影表現を多少意識して色を並べています。
そういう訳で着色作業を進め、最後にシルエットの残りを黒く塗り潰して、無事完成となりました(☟※再掲)♪
■終わりに
今回は、やや苦手な文様を異文化の力を借りて克服するという挑戦でした。
出来上がった作品を見るとワタクシ本来の色彩感覚からは生み出せない、濃ゆーい異国情緒が漂っており、嬉しく感じています♪
また、シルエット塗りを施したことで、文様を壊さずに対称性に風穴を空けることができました。宝相華文様のカッチリとした対称性をやや息苦しく感じる身としては、アレンジ次第で何とかなると分かっただけでも大きな収穫でした。
作品を見た方に楽しんで頂くという点に関しては及第点未満かもしれませんが、今後の精進に淡く期待して頂ければと思います。
本日もここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
連休終盤も楽しくお過ごしください。
それでは、お休みなさい〜(^^)/
【5/5追記】
今回の作品は、シルエットから想像を膨らませて頂きたいので、元ネタの版画作品は敢えて載せていません。
ポーケ兄弟のファッション・プレートは日本語版がマール社から出版されていますので、気になる方は探してみて下さい(^^)/