こんばんは〜。
8月末から9月上旬にかけて立て続けに偏頭痛に見舞われた上、多少の雑事もあって記事をまとめられずにおりました。
少し間が空いてしまってすみません💦。
さて先月、ご縁があって友達が描いた線画で塗り絵を楽しませて頂きました☟。
本稿では、その簡単な制作話を記します。
■主題・紙・画材・構想
今回の主題は「人魚姫」。
人魚に生まれて、人間の王子に恋をして、魔法で人間になって、王子の愛を得られずに海の泡となって消えてしまう……という有名な童話の主人公です。
星谷志摩さん(Instagramアカウント:@shima_hoshiya)がご自身のライブペインティング(※お客様の目の前で絵を描いたり仕上げたりするお絵描きのパフォーマンス)で制作した作品の線画を、塗り絵用に整えてご提供くださいました♫。
「塗りたいです♡」
とお願いしたところ、すぐに印刷した線画を送って下さる神対応…!!
この線画は大事に丁寧に塗ろう、と感激とともに決心しました。
ちなみに、紙の種類は『ヴィフアール』というもので、水彩画などによく使われるようです。
一般的な塗り絵本より厚みがあって、"水分ドンと来い"な風情でした(笑)。
ただ、今回は敢えてこの紙に油性色鉛筆を使いました。
厚みと凹凸があっていつもと違う使用感が楽しめるかもしれない、と思ったのです。
油性色鉛筆の中では、何となく、ねっとり系の軟らかい銘柄が合いそうな印象を受けました。
開始前にざっくりと、海中を遊泳する人魚姫を描こうと決めました。
本音を言えばもう少し構想を詰めておきたかったのですが、
「制作中に見えてくるものもあるだろう」
と意識を切り替え、少々見切り発車で制作開始です。
■制作過程
制作順は、毎度お馴染みの"塗れそうな所から塗る"方式です(^o^;。
制作中のメモや写真を元に、主なパーツのカラーパレットを作ってみました☟:
まず、肌のうっすらとした陰影を着けました☟。
使用色は Cloud Blue(PC 1023)というプリズマカラーの薄青色です。
この段階で第一印象通り
「ねっとり系が塗りやすそう♡」
との感触を得ました。
そこで、予て深入りしてみたかった"ねっとり系"ドローイングペンシル(ダーウェント社)を3色投入してみます☟:
使った色は、画像□内の3色でした☟:
最も左のSolway Blue(3615)は肌の陰影ができる箇所に重ねました。
Ink Blue(3720)は髪の、Mars Violet(6470)はビスチェの、それぞれ最も暗い部分に配します。
すると、髪の色とビスチェの色が、思った以上に暗く重苦しい色味となり愕然…💦。
これでは恋愛的な意味での好感度がダダ下がりしそうです。王子に振り向かれなくても悲劇でなくて理の当然、と思いたくなる印象でした。
こういう訳で、ドローイングペンシルには早々にご退場願いました(^o^;。
「序盤なのでまだ修整の余地もあるよね」
と気を取り直し、以後は"明るいねっとり系"たるプリズマカラーとアーチストカラー中心に塗り重ねながら軌道修整していきます。
手始めにビスチェに手を着けました☟。
ビスチェは布製にも見える形状ですが、風雅のイメージでは、貝殻の殻皮がねじれて出来たものという設定です。
ヒオウギ貝という貝をご存知でしょうか?
帆立貝のような形状で、殻が緋色、黄色、紫色など鮮やかな色をしている二枚貝なのですが、その紫色を念頭に置いて塗りました。
アーチストカラーのRose Grey(OP 495)を基調に、やや暗い所にWisteria(OP 430)、凹んで影が生じる所にプリズマカラーのBlue Lake(PC 1102)を配し、白い色鉛筆で適度に馴染ませています。
ただし最も明るい部分は白く塗り残しました。
光に当たっている感じが出ていたらいいなぁ、と思います。
ビスチェを塗り終わった後、私撰の肌塗りセット(※下の画像の右のほう)で肌塗り開始。
海の中ということで、あまり赤味を出さず、色白に見えるように塗っています。
この時点で7〜8割まで塗っておき、以後は他のパーツを塗る合間に少しずつ物足りないない箇所に色を加えていきました。
続けて下半身もプリズマカラーのProcess Red(PC 994)で下塗りしました☟。
この人魚姫のもう1つの山場は、髪塗りです。何といっても、結構な面積を髪が占めています。
しかし、色は最序盤から緑がかった青からエメラルドグリーンと決めていました。
風雅には何となく『人魚=海の妖精』という観念があり、髪や瞳は海の色を反映する色にしたかったのです。
ドローイングペンシルのInk Blueという非モテ系の青色の他に、もっと鮮やかな数色を投入して仕上げました。
水面から陽光が差し込んでいるイメージで塗っている為、適度にグラデーションをつけています。
背中ごしに見える髪は、水中で半ば影のように見えるのを意識し、三菱ポリカラーのPrussian Blue (10)で描き加えました。
髪塗りと並行して、下半身と海水も塗り込んでいきます。
下半身は、魚体のウロコ感を出すべく、同系色のRose Pink(Uni 604)でクロスハッチングをしてみました。
更に、影になる部分はプリズマカラーのDahlia Purpl(PC 1009)でクロスハッチングを重ねました。
紙に凹凸がある為、クロスハッチングも線が歪むのは避けられません。ただ、
「厳密な格子状にならないほうがウロコらしく見えるかも」
と楽観して敢行しております(^^)。
海水は、画面の上から下に向かって暗くなるように意識しながら青系の数色(※カラーパレットの中央の縦列)を塗り、適宜白色の色鉛筆を重ねて馴染ませました。
ここまでの工程で、おおよその方向性が固まっています。
瞳も深海のような色と決めると、以後は各パーツを方針通りに進めていきました。
■完成作品と人魚姫伝説への考察
前章までの工程から更に塗り進めた結果、「人魚姫」が完成しました☟。
画材:油性色鉛筆。
ちなみに、開始時に曖昧だった構想は、結局中盤まで曖昧なままでした(^o^;。
原因は、人魚姫という人物に対する共感度の薄さにあったのかと思います。
実は、風雅は幼少期から今に至るまで人魚姫に同情したり、その物語に憧れたりしたことが、一度もありません💦。
人間になってまで王子の近くにいたいとか、王子の愛を得ないと破滅するのに"声"を手放すとか、「この恋の成就は無理でしょ」と感じるのです。
ろくに泳げないのに船上で生誕祭を催す王子にも軽薄な印象があって、身を賭して恋するだけの魅力を感じませんしね💦。
異類婚姻譚の一種として悲劇に終わるのは常道としても、人魚姫が王子を殺さずに自らの生を投げ出すのが気に入りません。
何と言うか、人魚姫の生き様には自尊心が感じられないのです。加えて、恋であれ刃物であれ、誰の脅威にもなれずに終わっていく辺り、割と救いのない話だとも感じます。
しかし、不思議なことに、人魚姫の物語は人気があるのですよね……(・・;)。
制作中、特に髪を塗りながら
「何故人魚姫は人気があるのか?」
とつらつら考え込んでしまいました。
結論から述べると、人魚姫伝説とは途方もない博打の物語で、刹那的で無謀な博打がどういう末路を辿るのか、ドキドキしながら見守るのが醍醐味なのだと思います。
王子の愛を得るレースに参戦する為に、人魚であることを捨て、美しい声をも手放すのは、心理面で言えば恋ですが、行動面では我が身を賭けた博打に他なりません。
大方の人は損得勘定をするのでそんな博打に飛び込むことはなく、自らの欲望と理性で折り合いをつけて諦めます。しかし、それだけに、分別の声を無視して刹那的な情熱に身を任せることに、背徳的で甘美な誘惑を感じるのです。
人魚姫は、この常人には出来ない博打を打つことで、読者の密かな憧れを叶えます(結果はご存じの通りの失恋ですが)。
更に、失恋という結果が出た後で「人魚に戻れるかもしれない機会」が巡ってきます。
賭博の観点で見れば、元手の一部を取り返す好機が降って湧いてくる訳です。
しかし、人魚姫は王子を殺す事を拒否し、一世一代の博打の結果に殉じて泡と消えました。
攻めの博打は打っても守りの姿勢は見せなかったという意味で、人魚姫は清々しい賭博師だと言えます。
このように、人魚姫伝説は恋という甘美で不確実な大博打の顛末として仕上がっているのではないか。
そして、それが人気を集める理由なのではないか……と考察しました。
手を動かして塗りながらモチーフに関連するテーマを深掘りするのも、風雅にとっては塗り絵の楽しみの一部です。
そして、こういう考察を巡らせていると、考えている方向に作品が仕上がっていくものです。
本作品の人魚姫が強い眼差しになったのも、上に述べたような解釈が反映された為かと思っています。
■終わりに
長くなりましたが、以上が「人魚姫」制作話です。
改めて、素敵な線画を提供してくださった星谷志摩様に心より感謝申し上げます♡。
そして読者の皆さま方、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
よかったら次回も遊びに来て下さい。
それでは、また〜(^^)/