塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。まったり気ままな塗り絵ブログ。

【夏のレビュー企画】『世界の美しい文様ぬり絵 アラベスク文様』

 こんにちは♪

 今回も夏のレビュー企画の続きです。

『世界の美しい文様ぬり絵 アラベスク文様』(パイインターナショナル)を取り上げたいと思います(*^^*)

 

■基本的なこと

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発行日:2016年8月19日

 ※著者名記載なし

 

◇特色◇

・両面印刷

・塗り方ガイドなし

・付録なし

・インデックスなし

・作品数:80点

・ジャンル:模様系

 

■出会いと付き合い

 昨年の初冬、行きつけの書店で一目惚れして買いました。ちょうど塗り絵ブームが下火になって、売場が縮小され始めた頃のことです。初心者には細かすぎる、と自覚しつつも、「欲しくなった時には手に入らなくなっていそう」と思って決めました。

 線画の優美さに惹かれての購入だった為、時々取り出しては、塗りかけを進めたり、パラパラと未着手のページを眺めてうっとりしたりしています。

 同時進行で2~3ページ抱えているのですが、あまりに細かい為、一度に何時間も塗っていられません。集中し始める前に疲れて中断…という日がほとんど。

 なお、本書を開いている時は、アラベスク文様が描かれた寺院や宮殿を妄想していることが多いと、最近自覚しました(笑)

 西洋史と建築と美術が大好きなので、アラベスク文様塗り絵は妄想の世界に入り込む鍵みたいなものかもしれません。

 ……言葉にすると軽く変態めいていますね。こんな楽しみ方をしている人間もいるということで、生温かく見守って頂ければ幸いです(^^;

 

■ズバリ、どんな塗り絵か

 さて、肝心の中身について、まずは塗りかけページの画像をどうぞ↓

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 題名の通り、アラベスク文様が様々に描かれています。

 ちなみに、アラベスク文様とは、ざっくり言うと、唐草文です。狭い意味では、イスラム文化の影響を受けて16~17世紀にヨーロッパで隆盛した、つる草または曲線の文様を指します(参考画像↓)。

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 建築や装飾写本、工芸品などに幅広く見られる為、多くの人は「見れば分かる」程度に知っているはず。しかし、「描いてみて!」と言われると、戸惑うのではないでしょうか?

 少なくとも風雅にとっては、アラベスク文様は「識別できるけれど再現できない」状態でした。「薔薇」「鬱」といった、読めるのに書けない漢字のようですね。

 これは、文様の構成要素が何となくイメージできる一方で、構造がよく分かっていない為でした。アラベスク文様を微細に観察し、それを帰納する経験が不足していたのです。

 本書は、まさにその経験を得られる場となりました。

実際、配色の為に線画の構成に目を向けることになりますし、塗りながら、模様がどうなっているのか、なぞって理解できる一面もあります。

  線画の中のつる草をたどっていくと、2つに分かれたり、花のモチーフに連結したり、と様々に変化しつつ続いていくのが見て取れます。改めて、アラベスク文様のキモがつる草(もしくはつる草状の曲線)であることが実感できました。

  文様好きには堪らないひと時が過ごせる塗り絵本だと思います。

 

 …と、"アラベスク天国"な本書ですが、大きな注意点があります。

 細かいのです。時には、尋常でなく。

0.38のボールペンでもはみ出すパーツとか、「印刷の超絶技巧を見せつけたくて作ったの?」と訊きたくなりました(^^;

 本書の序文に「作品を完成させることで、(中略)前向きでリラックスした気分になれたりするでしょう」と誇らしげに書いてありますが、制作中は逆に気の抜けない局面ばかりのような気が……💦💦

 さらに、もう1点。

 本書の作品同士が相互に似ています。

 その理由として、

①モチーフの配置パターンが類似

②一部のモチーフが複数のページで重複

という2点が目につきます。

 もう少し線画の多様性を増すとか、収録作品数を抑える代わりに紙質を上げるとか、付録を付けるとか、1冊を通して楽しませる工夫はなかったのかな、と感じました。 

 

 なお、線画における線は、黒。概ね均一で、かなり細い線となっています。

 私見では、アラベスクのような文様は、1本の線の上でも太さが変わるほうが美しく見えると思うのですが、ぬり絵としては太さ均一でもいいのかもしれません。

 紙は少し硬めな印象を受けました。 

 また、ノドの部分ギリギリまで図案が広がっているページもある割に、開きにくいという難点がありました。

 

 本書は、線画(の細かさ)によって合う画材が異なってくると思います。

 一部の線画の非常に細かい部分では、色鉛筆どころか、極細のサインペンやボールペンでも無理では、と感じました。

「縫い針の先にインクを浸ければ塗れるかな」と思い立ったものの、実行する気になれず。悩ましいところです。

 なお、コアな体験談ですが、手持ちの硬~い水彩色鉛筆(カランダッシュのプリズマロ)では、乾いた状態で塗っている時に「塗りにくい」と感じました。紙に画材が馴染まず、拒まれるような感覚です。

 もしかするとやや気難しい紙質で、色鉛筆などは相性の良し悪しがあるのかもしれないと思いました。

 サインペンは、風雅が使ってみた限りでは、裏に滲まず、綺麗に発色しました。

■作品例

 風雅は、さほど細かくないページから塗っています。その為、ここに挙げた作品例は、本書の中では細かくない部類の作品ばかりです(^o^;)

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 本書で恐らく最も柄が大きい線画。

葉っぱの中の色が濃い部分だけ乾いた水彩色鉛筆で塗り、他は油性色鉛筆で塗りました。


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本書で最初に塗った線画です。

画材は油性色鉛筆。

 

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画材は、水彩色鉛筆。


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奥付ページのワンポイント塗り絵です。

細い線だけサインペンを使い、他の部分は油性色鉛筆で着色しました。

 

■終わりに

 最後は、恒例の感想コーナーで締めくくりたいと思います(*^^*)

好きか★★★★★★★★★☆

良いか★★★★☆☆☆☆☆☆

使い勝手★★★☆☆☆☆☆☆☆

達成感★★★★★★★★☆☆

推奨度★★★☆☆☆☆☆☆☆

 これは、「塗り絵本として使い心地に思うところは色々あるけれど、とにかく好き❤」という意味になります。

 「オススメ?」と訊かれた場合、余程の文様マニア以外の方は、書店で現物を見てみることをお勧めします(およそ万人受けはしない本かと思うので💦💦)。

 今回は、けっこう長くなってしまいましたね。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

 

【参考文献】

海野弘『ヨーロッパの装飾と文様』2013年、パイインターナショナル

【夏のレビュー企画】"Nice Little Town 2"

 こんにちは♪
 8月に入っても猛暑が続きますね。
 当ブログのレビュー企画も続きます。今回は、手持ちのうち唯一の洋書である、"Nice Little Town 2"を取り上げてみたいと思います。

■基本的なこと

著者:Tanya Bogema (Stolova)
発行年:2017年

 発行場所の記載がないものの、米国で印刷されたと書いてあるので、米国で出た本だと考えられます。

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◇特色◇
・片面印刷
・塗り方ガイドなし
・付録:テーマ外の塗り絵10ページ
・ジャンル:風景画系、風俗画系
・作品数:31
・ほぼB5寸法

■出会いと付き合い

 Amazonで、他の買い物のついでに買いました。現時点で、現物を見ずに塗り絵本を買ったのは、この1冊だけです。
 買った理由は、主に3つ:
・建物の塗り絵をしてみたかった
・安かった(600~800円位)
・片面印刷

 中身や画風は、塗った方がSNSに投稿した画像で事前に見知っており、「ユルい建物の塗り絵」程度の認識でした。
 本書は、建物塗り絵のいい練習になるのではないか、と思ったのです。

 しかし、届いた本を開くと、想像以上におおらかな線画に面食らい…そのまま、数ヶ月放置。
 結局、手を着けたのは6月に入ってからでした(^o^;) 
 直前に細かい塗り絵が続いた反動か
「とにかく線の少ない絵を手がけたい!」
という衝動で始めました。
 1点塗り上がるとその願望は満たされてしまいましたので、現在は再び放置…ゴホッゴホッ、再開の機運が高まるのを待っています(笑)
 我ながら暢気に構えていますね。
 本書に漂うユル~い雰囲気が、そんな付き合い方にも合っている気がしています(*^^*)

■ズバリ、どんな塗り絵か

 ズバリ、ユルい建物のイラストです。
 題名の通り、小規模の街の風景を徹頭徹尾フリーハンドで描いています。

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 画像で雰囲気が伝わるでしょうか?
必要最低限の輪廓線と、僅かな陰影の線で描かれており、画面全体が白っぽいのが特徴です。
「大まかに構図だけ作ってあげたから、あとはあなたの好きにして(^^)d」と言わんばかりの潔さ(笑)
 これだけのスカスカな絵にもかかわらず、何となくのどかで明るい雰囲気が出ている辺り、プロは凄いですね~♪
 描線は黒色で太め。
のびやかではあるものの、デジタル画特有のギザギザ感が残ります。

 実際に塗ってみると、絵柄の単純さから想像するより難しく感じました(^^;
 その一因は、質感を表す線が殆ど入っていないせいかな、と思います。
 例えば、道の舗装は石畳かタイルか。
 植木鉢は陶器かプラスチックか。
 輪廓だけ描いてあるので、自分で考えられる半面、その材質らしさを自分の技術で出す必要が生じます。
 そういった意味で、単に丁寧に色を塗れば見映えのする作品が出来る類の本ではなさそうですね(^o^;)

■作品例

 既述の通り、まだ1点しか完成させていない為、今回は1点だけ披露します↓

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 画材は水彩色鉛筆。

■終わりに

 最後に、恒例の感想コーナーです。

・好きか ★★★★★★☆☆☆☆
・良いか ★★★★★☆☆☆☆☆
・使い勝手★★★★★☆☆☆☆☆
・達成感 ★★★★★★★☆☆☆
・推奨度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆

 上の★評価をまとめると、「好きだし、塗れば達成感もあると思うけれど、人にオススメとは言えない」という意味になります。
 本書については、風雅自身の評価も定まりきっていないので、今は「こんな本もありますよ~」的なレポートにとどめておきたいと思います。

 それでは、今回はこの辺りで。
よかったら次回もおつきあいください。

【夏のレビュー企画】『"かわいい"の魔法にかかる夢色プリンセス塗り絵』

 こんにちは~♪
夏のレビュー企画第2回は、たけいみきさんの『"かわいい"の魔法にかかる夢色プリンセス塗り絵』(河出書房新社)について書いてみたいと思います。

■基本的なこと

『"かわいい"の魔法にかかる夢色プリンセス塗り絵』


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著者:たけいみき
初版発行日:2016年11月30日

◇特色◇

・両面刷り
・塗り方ガイドあり ※6ページ分
 インデックスなし
・付録:ミニカード型の塗り絵
・作品のジャンル:主に童話系
・作品数:44

 なお、作品数は風雅自身で数えたものです。見開きで1点と見なすか左右別々の作品と見なすか、解釈が分かれそうなページもありましたので、目安程度に参考にして下さい。

■出会いと付き合い

 塗り絵を始めた時、最初に買った塗り絵本です。
書店で様々な本を比較検討した後に、購入しました。
 選んだ理由は、主に3つ:
・童話ネタ →配色をイメージしやすい
・塗る対象が多岐にわたる →飽きない
・細かくない絵柄 →塗りやすそう
…とにかく、取っつき易さ重視でした。
かつ、人物・動物・小物など様々な物を塗ることで、自分の得手不得手や興味も明確になるだろうという狙いがありました。
 実際に塗り始めても、初期から手を着けやすかったと記憶しています。

 ページごとに対象物も雰囲気も異なる為、現在、この本については概ね次の方針で進めています:
 ・好みの線画→出来る限り素敵に仕上げる
 ・好みでない線画→新しい画材や技法を試す

 つまり、風雅個人にとっては、『気軽に塗れる本』という位置づけになるかと思います(*^^*)
 
■ズバリ、どんな塗り絵か

 作者のたけいみきさんは人気のあるイラストレーターなので、ご存じの方も多いと思います。
 人物は端整で可愛いらしく、西洋のお姫様でも割と東洋的な顔立ちをしています。
 各線画は、たけいさんワールド全開というべき、独特の雰囲気があります。ハート❤やキラキラ✨が多くて、フリルやリボンに満ちている世界。
 「夢のある…」と言われそうな画風ですが、ファンシー系の可愛さが苦手な向きには、ちょっと好みに合わないかも(^^;
 かく言う風雅自身も、線画を見て
「これはスウィート過ぎでは(^o^;)?」
と困惑することがけっこうあります。

 内容に関してもう1点特筆するべきは、後半に十二星座をテーマにした連作が描かれていることです。思い入れをもって塗れるよう、工夫が見えますね。
 星座シリーズもかなりファンシーですが、蟹座や蠍座水瓶座など、珍しいモチーフなので、楽しく塗れました♪

 前節でも述べたとおり、本書で塗るものの種類は、人物・動物・花・果物・衣服・小物・宝石・調度品など、多岐にわたります。
 大きな特徴としては、王子さまも含めて、成人男性は出てきません!
 例えば、最初の線画を開くと、眠れる美女を優しく見守るのは、なんとお馬さんですw

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 王子さまの馬?将を射んと欲すればすなわちその馬を射よ、なる格言もありますが、馬に王子の代理を求めるのは大胆過ぎる気も(^^; 

 また、プリンセス塗り絵と銘打っていますが、けっこう庶民女子も幅をきかせています。
 偽装表示?看板に偽りアリ?
 そう思いましたが、緒言に作者のモットーが書かれていました。
曰く、『すべての女の子はお姫様』と。
 「…ハア、そうですか」
としか言葉が出てきませんが、この定義なら、庶民の女の子がゾロゾロいても理に敵っていますね。
 所謂"おひめさまぬり絵"的なものを想像していると、ちょっとした肩透かし感を覚えると思います。

 線画のあり方は、現実感よりテーマを重視したイラスト、という印象です。
 絵画ほど厳密な遠近感や立体感が線画にない為、遠近法や陰影を意識し過ぎずに塗れます。
 書店で「この本なら初心者でもいけそうp(^^)q」と思えたのは、恐らくその点に由来するのかな、と今は思います。

 その半面、描線が抜けていたり、構図が不自然に見えたりする箇所もあり、線画の完成度には疑問が残りました。

ちなみに、本書の描線は黒く、かなり細めです。デジタル画像に特徴的なギザギザ感が、人によっては気になるかも(^^;

 画材については、巻頭の塗り方ガイドにて、色鉛筆主体で補助的にメタリックペンを使う方法が紹介されています。
 風雅もメタリックのペンを試してみましたが、あまり活用できた気がしません。センスが要求される印象でした。
 紙は、ケント紙に似た手触りをしていますが、あまりよく分かりません。
 油性色鉛筆、水彩色鉛筆、サインペンで塗れますが、水彩色鉛筆で水をふんだんに使うと、乾いてもたわみます。その状態で裏面にサインペンを使った時は、危うく滲みそうになりました。
 どうやら、両面とも紙に負担がかかる塗り方は控えたほうが無難そうです。


■塗ってみた例

 ここで、本書の着色例を挙げておきます(風雅が塗ったものばかりであまり参考にならないかもしれませんが…)。

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かぐや姫(部分)。
画材:水彩色鉛筆。

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ラプンツェル(部分)。
画材:油性色鉛筆。

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蠍座
画材:水彩色鉛筆。

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付録のミニカード。
画材:油性色鉛筆。

■おわりに

 今回も、まとめ代わりの簡単な感想コーナーで締め括って参ります。

・好きか★★★★☆☆☆☆☆☆「やや敬遠」
・良いか★★★★★☆☆☆☆☆「普通」
・使い勝手★★★★★☆☆☆☆☆「普通」
・達成感★★★★★★★☆☆☆「割とある」
・推奨度★★★★★★★☆☆☆

 好きでもないのに人に薦めるのか、とツッコミが入りそうですね(^^;
 ただ、色々なものが塗れるとか、手を着けやすいという価値は確実にあると感じているので、その種のメリットを求める方には自信をもってお薦めと言えます(^ー^)

 やや敬遠気味の線画を風雅がどのように楽しんでいるのかは、いずれ当ブログで取り上げる機会もあるかと思います。
 まだしばらくは暑さとレビューが続きますが、よかったらまたお付き合いください。
 それでは、また(*^ー^)ノ♪

【夏のレビュー企画】『心を整える、花々のマンダラぬりえ』

 こんにちは~。
 今日から、前回の予告通り、連続・塗り絵本レビュー企画をお届けしたいと思います。
 どんな順番で書こうか…と少し迷った結果、レビューや作例の少ない本から書くことにしました。
 という訳で、今日は掲題の本『心を整える、花々のマンダラぬりえ』について書きます。

■基本的なこと

 
原書"Flower Mandalas"は2015年に英国で上梓されました(と、奥付けに書いてある)。
 本記事で取り上げるのは、その日本語版になります。

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『心を整える花々のマンダラぬりえ』
著者:シンシア・エマリー
発行元:日本文芸社
初版発行日:2016年2月29日

◇特色◇
・片面印刷
・塗り方ガイドあり ※7ページ
・インデックスあり
・付録なし
・作品数:40
・作品のジャンル:模様系

 私が持っている本は2017年5月発行の第9版なので、日本でもそれなりに売れたのかもしれません。

■出会いと付き合い

 本書のことは、新宿駅近くの某大型老舗書店の売り場で知りました。
 その場で一目惚れして即レジへ…という訳ではなく、迷った挙げ句に買いました。
 購入の決め手は、片面印刷という一事に尽きます。
 水彩色鉛筆や万年筆インクを気がねなく水で溶いて使う際に裏抜けを気にしないで済むので、すべての塗り絵本が片面印刷だったらいいのに…と思う程、私は片面印刷推奨派です(^^;

 絵柄については、「反発なく塗れるけれども、熱狂的に好きになることはない」程度の評価で、これは現在でもあまり変わりません。

 しかし、40点の線画すべてがマンダラ様という事実には、「飽きっぽい私では早々に投げ出すかも…」という不安が拭えませんでした(購入を迷った理由も、そこにありました)。
 
 馴染みのない方向けに一応説明すると、塗り絵本に出てくる「マンダラ」とは、同心円状の対称形に事物や描線を配置した図案の形式と言えるようです。
 ポイントは、「円形」かつ「対称」であること。
 よって必然的に、画面の中心以外に描かれるパーツは、最少でも同じ物が左右に1個ずつ存在します。
 このような形状の線画に着彩する場合、左右ほぼ同じ絵柄を塗ることになります。
 飽きるのでは…と心配したのは、そういう理由でした。

 結論から言うと、実際に本書に手を出してから、購入前の不安は半分だけ当たりました。
 そう、マンダラは飽きます(当社比)。
 そこで、外出時に携行し、ちょっとした空き時間に進めるようにしました。5分10分といった短い待ち時間など、飽きる前に中断するパターンが最適な気がします。
 ちなみに、風雅の場合、この進め方で、作品1点につき2週間~1カ月程度かかっています。

■ずばり、どんな塗り絵か

 さて、肝心の中身はどんなものか、が気になるところですね。まずは、塗りかけのページの写真をどうぞ↓。

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 このように、直線・曲線・円といった抽象的な線の枠組みに、花や枝葉といった植物を対称的にあしらったものが、どのページにも描かれています。
 10人中8人が好感を抱きそうな、その代わりに熱狂的なファンも少なそうな、アクの少ない画風ですね。塗り絵向きな気がします♪
 描線は黒く、太さは0.5~1mm程度。
 本書の線画は見事に『塗り絵仕様』になっていて、描線に曖昧なところが殆どありません。塗っている最中に「これはどのパーツなのかな」とか「前後の位置関係が矛盾してないか?」とか惑わずに済むのは有り難い限りです。
 多少の立体感はあるものの具体的ではなく、象徴的な図案に仕上がっています。

 次に、好相性の画材についてですが。
 まず、巻頭の塗り方指南の中で、色鉛筆やペンなど、先の細い画材が適している旨が明記されています。
 実際に風雅が試した限りでは、油性色鉛筆・サインペン(トンボ社のプレイカラーK)・水彩色鉛筆が快適に使えました。水彩色鉛筆の場合は、乾いた芯先で塗ってから水を含んだ筆でなぞる使い方で試しています。
 万年筆やそのインクもよく発色しますが、下のページに移る危険性が高いので、下に要らない冊子を敷く等の対策をしたほうがいいかもしれません。

 本書にどんな塗り方が合うのかは、あまり真剣に考えた事がありません(^^;
 時々、Instagramで同系色の濃淡で美しく仕上げた作品を見かけるので、同系色は1つの成功パターンかと思います。

 風雅の場合は、外出中に塗る為、構えずに、ほぼベタ塗りで進めています。
 配色は行き当たりばったりですが、意外な2~3色の組合せを試してみるケースが多いかもしれません。線画がしっかりしているお蔭で、こんな適当なやり方でも塗れば意外と収まりが着きます(笑)

 そう考えると、割と懐の深い塗り絵帳なのかもしれませんね~♪

■作品例
 
 実際に塗った例として、これまで塗ったページを何点かお目にかけたいと思います。
 

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画材:色鉛筆とカラーペン(重ねない塗り)

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画材:油性色鉛筆

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画材:油性色鉛筆

 3つ目の作品は本書で最初に塗ったもので、開始後しばらくグラデーションなどに挑んだ名残が、花の色などに見られます(^^; なお、想像つくと思いますが早々に飽きてしまい、凝った塗り方は頓挫しました。

■おわりに

 ここまで本書の中身と風雅の体験談をご紹介してきました。レビューの終わりに、風雅個人の感想を簡単に付け加えておきます。

・好きか ★★★★★☆☆☆☆☆「普通」
・良いか ★★★★★★★☆☆☆「良い」
・使い勝手★★★★★★★★☆☆
・達成感 ★★★★★☆☆☆☆☆「普通」
・推奨度 ★★★★★★☆☆☆☆

 推奨度、つまりお薦め出来るか否かは、「人によってはオススメ」程度です。どういう人にか、と言いますと、「何も考えずに、枠線の中を塗っていけば良い作品になる塗り絵がしたい」という方。
風雅自身の経験で、『考える』行為そのものを一度止めたいのに止められない…という時に本書を塗った事があり、うまくリセットできました。以来、本書の実際的な効用とはそういう部分にあるのかな…と感じています。

 以上、初めての塗り絵帳レビューをしてみたのですが、いかがでしたでしょうか?
 次回もまた別の本のレビューをお届けする予定です。よろしければまたお付き合いください。
 それでは、今日はこの辺りで(^o^)/

手持ちの塗り絵本一覧

 こんにちは。
早すぎる梅雨明けから、毎日酷暑が続きますね。
暑すぎて出かける気もしない日々…とくれば、休みの日は勿論塗り絵をしています(*^^*)

 さて、最近、塗り絵本が増えてきたので、今回は、現在塗り進め中の本を列挙してみたいと思います♪


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・たけいみき『"かわいい"の魔法にかかる夢色プリンセス塗り絵』、河出書房新社
・『世界の美しい文様ぬり絵 アラベスク文様』、パイインターナショナル
・井田千秋『森の少女の物語』、日本ヴォーグ社
・河合ひとみ『世界の模様 ぬりえの旅』、誠文堂新光社
・シンシア・エマリー『心を整える、花々のマンダラぬりえ』、日本文芸社
・ジョハンナ・バスフォード『海の楽園』、グラフィック社
鈴木淳子『平安王朝絵巻ぬりえbook』、ディスカヴァー・トゥエンティワン
・Bogema, Tanya "Nice Little Town 2" (洋書)
・江種鹿乃子『幸せのメヌエット』、ナツメ社
・江種鹿乃子『心ときめく四季のワルツ』、ナツメ社

 以上、全部で10冊。
うち2冊はポストカードブックで小型です。
 今回数えてみて、「いつの間にこんなに増えていたのか…」と自分でも驚きました(笑)
 ちなみに、上記リストは、着手した順に並べました。色々手を出してみた足跡になっていますね(^^;

 「せっかくなので、この塗り絵本遍歴を活かせないかな?」と考えた結果、1冊1冊のレビューを書いてみようと思いたちました。
 夏のレビュー企画として、毎回1冊ずつ、取り上げていきます。その本に興味を持っている方に、特色が伝わるような内容にしていきたいと考えていますので、よかったら次回以降もおつきあいください。

追記:上記リストにある本について、質問があれば気軽に本記事のコメント欄にお寄せください。
レビュー記事にて回答させて頂きたいと思います(^^ゞ

『幸せのメヌエット』完成作品ギャラリー①

 こんにちは♪

ご無沙汰している間に、江種鹿乃子さんの塗り絵本、『幸せのメヌエット』を手に入れました。 

  ここまで4点の線画を塗りましたので、お目にかけたいと思います。

 

①眠れる栗鼠

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  爆睡する4匹の栗鼠です。

 黒い背景のページを塗るのは、塗り絵始めてから初でした。慣れないせいもあってか、目がチカチカして塗りにくかったです……


②狐と小鳥とアライグマ


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 秋の木洩れ陽にまどろむ狐。

 狐といえば後ろの動物は当然狸…かと思いきや、どうやらアライグマのようです(顔の模様から推定)。

 このページでは、面積の大きい部分を水彩色鉛筆で薄く下塗りして濡らし、乾いた後に油性色鉛筆で仕上げました。


③花火見物

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 2足立ちの小動物が空飛ぶ絨毯に乗って、花火を見物にしています。

 この動物は何か?

 一見では特定しかねた為、あれこれ画像を検索し、プレーリードッグと解釈することにしました。

 顔の模様は、ユタプレーリードッグを参考にして塗っています。


プリンアラモード城攻略

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 鼠のトリオが特大のプリンアラモードをつまみ食いしています。

 可愛い小動物が悪さをする図というものは、私の好みのど真ん中なので、このページは終始ノリノリで塗りました(笑)

 鼠は、"曲者感"を出したくて黒っぽい毛色にしました。トクノシマトゲネズミという固有種の写真が、とても参考になりました(ありがとう、レッドデータブック!)。

 

 以上、4点を塗り終わった時点でも、「この本は今の私には難易度が高いのではないか?」という気がしています。

 ただ、試行錯誤を続けることで上達も早まるという手応えを感じました。うまく塗れると動物が余計に可愛く見えるのを励みに、頑張って塗り進めていこうと思います♪

 それでは、今日はこの辺りで。

よかったら次回もおつきあいください(*^ー^)ノ♪

『海の楽園』完成作品ギャラリー④海ヘビ

 こんにちは♪
 ジョハンナ・バスフォード『海の楽園』で海ヘビのページを塗りました↓。

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 ヘビっぽい形状の生き物が苦手なので、今回は図鑑も画像も参照していません(^^;
 1匹の胴体につき4、5色使用。
 芯先で塗ってから水を使ったり、筆先で塗ったりと、細々塗り方も変えています。
 今回も水を使い過ぎたのか、紙がややたわみました…( ´△`)

 何故敢えて一貫しない塗り方をしたかと言えば、ウロコのまだらな色合いを出したかった為です。
 あれこれ苦闘した結果、なんとかまだらっぽくなりましたが、方法として把握するには至りませんでした(^^;
 またウロコの面積が多い線画を塗る時に挑戦してみたいと思います。 

【画材】買って後悔した色鉛筆

 こんばんは。

 今回は、塗り絵目的で買ってみたものの、「買わなくてもよかったかも…」と感じた画材を取り上げてみたいと思います。

 

①Seriaの和の色鉛筆(12色セット)

 100均で売っていた油性色鉛筆のセットです。瑠璃色やら牡丹色やら、雅やかな色名が気になって買いました。

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 普通の12色セットからややずれた色合いで、発想は悪くないと思います。

 ただ、瑠璃や青磁といった"差し色"が、鮮やかであるものの、甚だしく人工的な色味に映ります。

 廉価なメーカー品と同じ画面で併用しても、悪い意味で浮いてしまう印象でした。

 動植物や人間の絵柄だと顕著で、模様系なら使えなくもない…と思っています。

 

②三菱890色鉛筆 あかむらさき

 塗り絵を始めて2週間程の頃、仕事帰りの文房具屋でバラ売りの色鉛筆を買い足していました。

 この色鉛筆もそのうちの1点です。

 芯の色が好みだったので、買いました。

 使ってみると、色味は期待通り(*^^*)

 塗っている感触は、かなり軟らかいものの、許容範囲。

 しかし『塗ると大量に粉が出る』という特徴があり、気がつくと、未着色の部分に点々と赤い粉が散らばっていました。

 使い慣れた人ならば、この特徴を活かして味のある作品に仕上げる事も可能かもしれません。

 しかし、初心者の風雅が、細かいところの多い塗り絵に用いるにはハードルが高すぎたようです(^^;


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※上が三菱890(②)。下がヴァン・ゴッホ(③)。

 

③ヴァン・ゴッホ色鉛筆 Warm grey deep

 画材屋さんで買いました。

 色鉛筆関連のコラムを探した時、ヴァン・ゴッホ色鉛筆は、執筆者によって毀誉褒貶が分かれており、どんな物かと試しに1本求めたのです。

 使ってみた結果、

・軟らかい

・油断するとすぐに折れる

・均一に塗るのが難しい

といった印象を抱きました。

 加減が難しいということでしょうか。

 とりわけ細いところが塗りにくいので、「塗り絵には向かないのかも…」と持て余しています(^^;

 

 と、ここまで取り上げた色鉛筆を多用して、マンダラ状の線画を塗り上げました↓。

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 背景の濃い赤地が②の三菱890、上下左右に伸びる枝が③のヴァン・ゴッホです。青い葉っぱ等に①の色鉛筆も使っています。

 そもそもこの配色が「ワタシ、病んでる?」と疑いたくなる程ヘンテコですねー(^^;

 これでまとまるマンダラって凄い、と塗りながら実感…。

 

 以上、風雅の残念な画材レポートとなりましたが、いつか誰かの役に立つこともあるかも…と思い、記してみました。

 ここまでおつきあい頂き、ありがとうございました。

 それでは、おやすみなさい★*☆♪

【制作の記録】端午の節句、平安時代。 その3:もう一人の装束も悩ましかった…

  こんばんは、風雅です。

本日も平安装束の塗り絵メイキングを記していきたいと思います。

 

 画面左側の人物は、左の人物と少し異なった出で立ちをしていました。

 外側の衣の襟元がガウン風になっているのといい、袴に模様があるのといい、見慣れません(この装束の名称をご存じの方、ぜひ教えて下さい!)。

髪型からすると、成人前の女の子なのかもしれません。

 よく分からないことが多いのですが、逆に自由に塗ってみることにしました♪

 

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 こちらの着物のポイントは――

①一番外側の着物に、桐と笹の模様が入っていること

②袴に市松の模様が入っていること

以上の2つだと思います。

 

 最初に、一番外側の着物の色を決めました(色辞典 DL-10)。

 次に、その着物がなんとなく硬そうな生地に見えるので裏地が付いているのだと解釈し、三菱888色鉛筆のブルーグリーン(光が当たるところはエメラルドグリーン)で塗りました。

 上の2色を引き立てる配色をめざしつつ、単(ひとえ)と五衣(いつつぎぬ:単の上に重ねた着物)の襟・袖・裾を塗りました。

 この時点で見た人に「斬新な......」と苦笑される程派手になっていました。

 そこで、①の模様は、葉脈と茎を塗るに留めて葉を白く残しました。

ろうけつ染めの布をイメージしています(平安時代にあったかどうかは裏付けを取っていません)。

 ②の袴は、織りの技術で模様が出ているものとし、類似する2色で市松に塗りました。

 袴の花型の模様は、調和を考えて上の着物と同じ色にしました。

 

 人物を塗り終わった後で、小物やフレームの薬玉にも着色。

これでかーなーりー賑やかな画面になった為、背景と床は塗らずに完成としました♪
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  白状しますと、5/6朝までかかってしまい、季節の企画としては野暮そのものなのですが、このページが完成したお蔭で、自分も古代風に端午の節句を祝った気分になれました♪

 

 端午の節句ページのメイキングはこれで完結です。

お読み頂き、本当にありがとうございました。

それでは、今夜はこのあたりで。

お休みなさい。

【制作の記録】端午の節句、平安時代 その2:布地の表裏を塗り分けてみた。

 こんにちは、風雅です。
 端午の節句のページについて、本日もメイキングを記していきたいと思います♪
 
 前回単(ひとえ)と表着(うわぎ)を塗ったあと、はたと手が止まりました。
 画中に衣の裏側が見える部分があった為です。
特に単の袖の表側と裏側が隣接しており、塗り分ける必要を感じました。
 平安装束の裏地の事情はよく分からないので、本ページでは単の裏地はないことに決定(←強引)。
 布地の表裏を塗り分ける方法を、思いつくままに試してみました。

 最初に、単の両袖で「表」にあたる部分を塗ります。
ここでは、塗り絵帳の12ページに紹介されている通りに、一色の濃淡で塗りました。
1種類の糸で織り出された模様を表現する塗り方なのだと思います。
三菱888色鉛筆のブリリアントグリーンで下塗りした後、同じ色鉛筆で模様の線をなぞる手順になりました。

 次に、左袖の「裏」側部分。
表側と同じブリリアントグリーンで薄めに下塗りした後、一段薄い類似色で模様の線をなぞりました。
三菱888色鉛筆のエメラルドグリーンを使用しています。
その後で、陰で少し暗くしたい部分だけ、グレー(木物語のねずみいろ)で薄く塗り重ねました。
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 その次に、右袖の「裏」側部分。
 ここでは、左袖と逆に、薄い色で下塗りした後、表側の色で模様の線をなぞってみました。
つまり、『エメラルドグリーンで下塗り、ブリリアントグリーンで織り線部分を強調』という手順です。
陰にしたい部分は同様にグレー(木物語のねずみいろ)で塗りました。
そして、仕上げにお化粧のフィニッシュパウダーをはたくような感覚で、右袖の裏側部分全体を青味が少し強い類似色(三菱888 ブルーグリーン)でさっと塗りました。
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 個人的には、右袖の塗り方のほうが「裏」らしい見た目になる気がするのですが、いかがでしょうか?
ともかくも、上記の作業までで、『このページでは裏側は表側よりわずかに薄く、くすんだ色で塗る』という方針が固まりました。
この方針に従って着物部分を塗り進め、右手の薬玉と手前の箱も着色。
さらに髪と顔を塗ったところで、5/3は終わりました。
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 ここまでで、およそ半分が完成しました。
実はこの塗り絵帳は横長でして、左にもう一人控えています。
という訳で、次は、左側の攻略について記したいと思います。
よければ次回もお付き合いください。

今週のお題ゴールデンウィーク2018」