こんばんは〜(^o^)
引き続き「八ツ橋(伊勢物語)」(『平安王朝絵巻ぬりえbook』収載)制作話の第3弾をお届けします。
本稿では、燕子花(かきつばた)の葉と花を塗っていこうと思います。
次章ちょっとだけ『伊勢物語』の解釈に踏み込みますが、塗り絵ブログの本分は守りますので、気軽にお読みください。
■配色のポイント①:燕子花の花と葉
さて、その葉と花を何色で塗るのか。
かねて示唆していたように、これは軽視できないポイントです。
何故かといえば、東(あずま)下りの主人公(※以下「アズマくん」と呼びます)は『燕子花』&『旅の心』というテーマを指定されてすぐに
「妻が恋しい…(ノД`)」
と歌い出す訳で、燕子花の佇まいから妻を想い起こしたと見なせるのです。
高校生時代、古典の授業でこの話を読んだ時、風雅はここが一番腑に落ちず
「どうして燕子花を見て『奥さん恋しい』ってなるの?」
と疑問に思っていました。
"妻"とか"女性"とか、燕子花にそういったイメージがなかったもので…💦
逆に言うと、『伊勢物語』の本文でその辺りの説明がないのは『燕子花→奥方』への連想が「あー、分かる分かるー」と同時代の読者に難なく受け入れられたからとも考えられます。
では、平安時代の人々は燕子花にどういうイメージを抱いていたのでしょうか?
そして、平安時代の燕子花イメージを投影して塗ることが、"読書感想塗り絵"のあり方とはなりませんでしょうか?
ここで高校生の資料集にも載っているレベルで有力な手がかりに気付きます。
すなわち、"襲(かさね)の色目"。
十二単の配色パターンとしてご存じの方も多いのではないでしょうか?
今回塗っている『平安王朝絵巻ぬりえbook』の8-9ページにも代表的なものが紹介されており、お誂え向きに"かきつばた"も載っていました。
それを888色鉛筆でざっくり塗ってみると、下のようになります☟。
【襲の色目:"かきつばた"】
この通り、赤みが強い紫色の濃淡に深緑を組合せたパターンでした。個人的に、某琳派絵師の影響で『燕子花といえば青紫色』と思っていた為、少々拍子抜けしました。
ただ、平安時代の人には
「燕子花ね。うん、そんなカンジ♡」
と思える程典型的な配色だったのでしょうね。
「"かきつばた"の襲の色目のような風景を目の当たりにしたとすれば、そういう装束をまとった女性を思い出しても自然では?」
このような考えから、"かきつばた"の色目の構成色で花と葉を塗ることにしました。
■燕子花の葉
花よりも葉っぱのほうが面積が大きい為、先に葉っぱに手を着けました。
"かきつばた"の色目の緑色に近い2色を基調とし、黄緑がかった渋めの緑なども使って塗っていきます。
凛と伸びる葉は燕子花の魅力の1つなので、葉っぱ同士が交錯したり隣り合ったりする部分で同じ色にならないように気を付けて塗りました(※参考画像☟)。
また、大雑把な傾向として根本が先端よりも暗く見えるように、と心がけました。
いきおい、下のような虫喰い形式で進行することになります:
虫喰い式制作は幾分効率が悪い気はするものの、全体像を見渡しながら進められる点が大きなメリットだと思います。
そうして、ようやく葉っぱを塗り終わりました。
■燕子花の花
前々章での構想に従い、花も"かきつばた"の色目に近い紫系統の2色が基調になるように色を選びました。
1輪の花の中で赤紫の濃い部分と薄い部分が共に見受けられるように意識しながら、虫喰い式に塗っていきます。
線画だと小さくて分かりにくい為、似せて描いた燕子花の線画☟でどんな手順で塗ったかを大雑把に説明します。
なお、元は私的な記録の為、塗り方が雑ですが、ご容赦ください💦
①外側の大きな花びらのスジをごく薄い紫色で塗る。
使用色:888色鉛筆のライラック
②スジのすぐ外側、花びら同士が接する部分など最も色の濃い部分を2色で塗る。
使用色:888ディープバイオレット、フューシャパープル
③直立する花びらの中央を塗る。また、②のすぐ上側にも重ねる。
使用色:888フューシャパープル
④外側の花びら以外の①〜③に一段薄い色を力強く重ね、混色する。
使用色:888ラベンダー
⑤外側の花びらの下のほうにダイヤ形に濃い色を塗る。
使用色:888フューシャパープル
⑥外側の花びらで少しだけ暗くなりそうな部分を濃い色で塗る
使用色:888フューシャパープル
⑦外側の花びら全体を、⑤⑥と混色しながら塗る。但し最も明るくなる部分だけは白く塗り残す。
使用色:888ラベンダー
⑧白く塗り残した部分を、⑦の塗り際から色を伸ばすようにして塗る
⑨外側の花びらの最下端の線を濃い色でなぞる
使用色:888ディープバイオレットもしくはフューシャパープル
⑩参考:使用色パレット
基本的な塗り方は上記の通りで、花びらの裏側が見える場合は、888ラベンダーで塗りました。
あとは花の形や位置に合わせて適宜調整…という方針です。
この線画の燕子花は同じ形の使い回しが1つもなかったので、1輪1輪が別の花なのだと意識して塗りました。
花を塗り終わった時点で、下のようになっていました☟:
■小休憩
以上、襲の色目の色合いを用いて燕子花の群生に色を着けるところまで、お伝えしました。
花に赤みがある為か、少なくとも男性よりは女性を思い起こさせるような色合いにはなっていると思います。
なお、襲の色目の最左端は、「単(ひとえ)」という内側の着物の色に当たるのですが、この紅色はうまく活用出来ませんでした。
ただ、調べてみると単(ひとえ)は色のバリエーションが少なく、概ね白・赤・深緑のいずれかの系統になるようなので、拘り過ぎなくてもいいのかな、と思っています。
ともかく、これで風景部分は塗り終わりました。本シリーズ最終回はアズマくんの制作などについて記す予定です。
それでは、お休みなさい。
【追記】
襲の色目は、厳格に表示の6色を使うものではなく、状況に合わせてアレンジ可能なものだったようです。
ただ、この議論に深入りしても塗り絵的に実りは少なそうなので、本稿では割愛しました。