塗り絵をめぐる冒険

いち美術ファンによる、「目指せ、塗り絵上手!」な試行錯誤あれこれ。まったり気ままな塗り絵ブログ。

【制作の記録】なんとなく、オパール〜「私の小さな願い−オパール−」〜

 こんばんは〜。

 今回は久しぶりに制作の記録です。

 

 先月の記事で新着本として紹介した『ヴィクトリアン幻想図鑑 黒イ森ぬり絵ブック』から、漸く1点塗り上がりました☟:

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題名:「私の小さな願い−オパール−」

画材:油性色鉛筆。

第1章:鉱物少女のオパールをテーマとした線画です。

 中心に描かれているのは、瞳を閉じ、座った姿勢で祈るように両手を組む、長い髪の少女。彼女を取り巻くように5つのオパールが宙空に浮かび、背後にはところどころにリボンが巻き付いた、葉のない樹が見えます。

 

■構想

 オパールという宝石のイメージを塗り表したい、と考えました。

 線画は、副題にもある通り、"ねがい≒欲望≒希望"のイメージを表出しています。

 一方で私がオパールに抱いているイメージは、「脆い」「幻惑」「予見」「虹」「10月生まれ」「和名がダサい」「異端の宝石」。

 どうにも願いが叶うイメージがない💦。

 個人的には好きな部類の鉱物です。

 オパールは石なのに変化しやすく、一応宝石扱いされながら結晶構造を持たず、それでいて美しく、複雑に色を揺らめかせます。

 そんな性質が偏屈者の感性に訴えてくるのです(☚オパールが好きな人が全員偏屈者だと言いたい訳ではありません!)。

 とはいえ、願いが叶うイメージはない…。

 宝石の中では割れやすい一面もあり、むしろ望みが砕けそうで頼りない…💦。

 

 どうしたものかと構想を固めかねた挙げ句、(いつも通り?)成り行き任せの出たとこ勝負で塗っていくことにしました。

 頼みの綱は、オパールの多様性。

 この鉱物は色や形状の幅が広いのです。

 乳白色の地色に様々なパステルカラーが不規則に浮遊するオパールもあれば、黒い地色に虹の7色が浮遊するオパールもあります。遊色効果が特徴かといえば、遊色効果のないオパールもあってそうとも言い切れません。果ては京セラの京都オパールのように、人工的に製造されたものまで存在します。

 色々調べていけばきっと好みと構想に合致するオパールが見つかるさー!の精神で、いざ攻略開始です。

 

■画材:油性色鉛筆

 油性色鉛筆を使って塗りました。

 肌以外の部分では、単色芯はUniカラー、複色芯は虹色鉛筆及びTri-colour色鉛筆(クレヨラ社)のみを使っています。

 

 入手したばかりのTri-colour色鉛筆が、オパールの気まぐれな遊色を表すのに適していて、早速大活躍してくれました♪。

 各色の名称が英語で分かりにくいかもしれないので、色見本を下に載せておきます☟:

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 単色芯の色鉛筆をUniカラーにしたのは、宝石らしい透明感を表すのに最適だと考えたからです。

 なお、Uniカラーの色鉛筆は、次章以下の記述で『色名(色番)』の形式で記します。

 

■制作過程

 髪の毛の部分から着手しました。

 髪の毛は青味の強いブラックオパールの色合いにしようと思いました。

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 工程は下記の通りです:

①Tri-colour色鉛筆の'galaxy'で適度に隙間を作りながら下塗りする

②光が当たる部分をUniカラーのCeladon(538)で塗る

③髪の房の輪郭や濃くしたい部分にViolet Blue(530)、Black(570)、Dark Grey(568)を適宜重ねる

 ②〜③はバランスを見ながら繰り返し、少しずつ進めていきました。

 

 髪の毛の他、開始初日に背後のリボンも虹色鉛筆で塗りました。オパールから遊色だけを抽出したイメージです。

 

 次に衣服です。

 首掛けの長いリボンがなければフィギュアスケーターの衣装のようなデザインですね。

 線画でお尻の丸みが描かれている点からして、スカート部分は透ける生地💧。

 肌が透けるまでにはせず、体の輪郭が見て取れる程度の透け感に留めました。

 何となれば、スカート部分に京都オパールの「杜若」の色合いを取り込みたかったためです。

 地色全体はMauve(524)で塗り、濃くしたい部分にMagenta(525)を重ねました。

 そこに遊色効果の斑をランダムに散らしています。この斑の色はMustard(551)を使いました。

 衣服の他のフリル部分も、同様に塗っています。

 胴部と膝上のサポーター(?)はスカート部分に合うようにPurple(562)で塗りました。

 肌も塗り始め、手の爪は虹色鉛筆で虹色に染めます。

 

 衣服の各部の色を決めたところで、背景にも着手。背景はTri-colour色鉛筆の'pebble blue'で塗りました。

 実は、制作中、ネットでオパールのことを調べ続けた結果、かなりの頻度で宝石屋の広告が出てくるようになりました。その中でこの'pebble blue'の色味に似たオパールの首飾りがあり、印象に残ったので背景色に採用。

 件の広告のオパールは、恐らくライトオパールと分類されるかと思います。しかし何分にも付け焼刃なので間違っているかもしれません。

 

 さて、ここまでで、各部とも中途半端ですが、下の画像のようになりました☟:

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 結構賑やかというか、締まらない配色になってきましたね💧。

 首から背中に垂れる布地を何色にするか考えがまとまらなかった為、先に楕円型オパールの色を決めることにしました。

 条件は、実在するオパールの1種で、"叶う望み"の印象に合うもの。そして、出来れば宝石らしい価値もあるもの。

 幸運にも地色が赤や橙色を示すファイアーオパールが探索に引っかかりました。

 ファイアオパールには、遊色効果のあるものもないものもあるようで、当然ながら前者のほうが高級とされています。

 中空に浮くカボションカットの宝玉は、遊色入りのファイアオパールとしました。

 そして、画面上の広い部分の色の系統をこれ以上増やさないでおこうとの判断で、背中の布は遊色の無いファイアオパールの色合いで塗ることに決めました。

 

 最後のポイントが背後の樹でした。

 これは珊瑚樹かな、とも思ったのですが、

「宝石珊瑚とオパールを組み合わせても絵面がしっくり来ない」

と感じ、珊瑚樹の案は却下。

 珊瑚とオパール、どちらも美しい宝石だとはいえ、異質の美しさだと思うのです。

「あくまで主役はオパールですから!」

という拘りのもと、背後の樹は虹色の遊色が浮かぶブラックオパールにしました。

 なお、ブラックオパールの地色はオニキスのような純然たる黒色ではなく、青・緑・紫といった色味を帯びる暗い色となっています。ブラックと付いているのは"白黒(≒明暗)の2択で言えば黒(暗)"という程度の意味合いなのでしょう。

 それを踏まえてこの樹の地色もBlack(570)だけでなく、Dark Grey(568)、Dark Green(617)、Violet  Blue(612) 、Prussian Blue(612)、Indigo(529)を気まぐれに重ねて塗りました。

 一方で、遊色の部分は虹色に該当する単色芯の各色鉛筆と虹色鉛筆で塗りました。樹を塗っている時、ラストスパートの高揚感で色番を確認しそびれたもので、具体的にUniカラーの何色を使ったかもはや分かりません…💦

 

■完成作品と反省会

 ともかく前章の通りの思案と工程を経て作品は完成しました。

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 少女の胴部辺りを拡大すると、下のようになります☟:

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 細かな反省点は尽きないので割愛するとして、最大の反省点は各種のオパールをバランス良く描き出してオパールを象徴的に塗り表わせたかという点に疑問が残ることです。

 それは、表現としての完成度が足りてないとも言えます。

 オパールという多様性ある鉱物を相手取るならば、調べたことや画像から受けた印象を一度自分の脳内で咀嚼し、その後に構想を組み立てるのが理想的なアプローチでした。

 成り行き任せの出たとこ勝負にした結果、どうも得た知識に引きずられたまま完成まで突っ走ってしまった憾みが残ります。

 …と、イマイチなレポートを書いた大学生のような反省が残るものの、一方で制作中はのびのび塗れて楽しかったです。

「どう塗っても間違いにならない」

と確信できるのは、複雑かつ多様なオパールならではの有り難みでした♬。

 制作の記録は以上です。

 本記事の最後に関連書籍を載せておきますので、ご興味のある方は参考にして下さい。

 ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。

 それではまた〜(^^)/。

 

 

《関連書籍リスト》

■線画の出典

①黒イ森『ヴィクトリアン幻想図鑑 黒イ森ぬり絵ブック』,2022年,パイインターナショナル.

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■参考にした書籍

②飯田 孝一『世界観設定のための宝石図鑑』(2022年, 株式会社エクスナレッジ).

 

③下林 典正、石橋 隆『史上最強カラー図解 プロが教える鉱物・宝石のすべてがわかる本』(2014年、ナツメ社).

 

 ③は代表的な鉱物について鉱物学者が記しているカラー写真付きの入門書です。鉱物・宝石のすべてではなく、ごく初歩的なことが分かります(看板に偽りあり!)。行間に時折パワーストーンブームに苦々しい眼差しを注ぎたそうな鉱物学者の思いが滲み出ており、オパールの遊色のような妙味を添えています。

 なお、①②は10月の物欲祭りの記事で紹介しているので、そちらをご参照下さい。